R.E.006 – No Eyes North/北寂(ほくせき)
雪原の端で、世界が急に静まった。街のように過剰な視線はなく、海外のように「外国人」という逆観測もない。ここには、誰のベクトルも差し込まない観測圧の真空がある。風の温度、靴底の圧、肺がきしむ音だけが、俺を定義する。ザ・ハンドの声が遅れて届く。「一次観測だけで立て。」
◆解説
都市は外部観測が強すぎて、自己観測が希薄化する。異境ではラベリングによる逆観測が常時かかる。ノーザレムの田舎はその両方がないため、一次観測(自分が自分を観ること)が純度高く起動する。→ 結果、ここは避暑ではなく観測リセットの場として機能する。※長居は禁物。社会的キャリブレーションを徐々に失うから。
◆連想したプロクテル
R.E.006 – First-Observation Shelter (一次観シェルター)地域: ノーザレム観測帯分類: R.E.意図: 観測圧を一度ゼロに落とし、舌と意識のキャリブレーションを初期化する。
◆構成レシピ
Vodka 25ml純米酒 20mlペパーミントリキュール 10ml炭酸水 塩 1 barspoon塩の1滴が「輪郭」を返し、一次観測を立ち上げる。余韻は短く、次の観測に席を空ける。
◆世界観文
雑音を殺すのではない。雑音の主を一度、退席させる。ここから先は、お前の息と足音だけだ。
◆ミツルギの個人的記録(子供の頃から抱えていたもの)
安心感:雪が音を吸うと、俺は落ち着いた。外の視線が消えると、胸の中のメーターが0に戻る。誰にも見られていないのではなく、誰のベクトルも刺さらないという確かさ。あの無音が、俺の安全圏だった。高揚:> 冷気が肺を洗う感じ。足裏で雪を潰す規則音。世界が減衰していくほど、一次観測の針が振れる。俺はそこで初めて、ちゃんと起きる。体の輪郭が立って、景色よりも先に自分が見える。哀愁:> 夕方の青。遠くの踏切の音が薄くなる瞬間、帰らなきゃいけない時間が来る。真空に長く居られないのは知っている。好きな静けさほど、手放す練習が要る。この夢は、それらを一文にしてくれた。「観測圧がゼロの場所で、俺はやっと自分を観れる」――それが、子供のころから言いたかったことだ。